EDITOR’S REPORT

【FOODIT未来総研】ITでつながりを広げる次代のレストランが見せる外食の「希望ある未来」(その1)

ー トレタCMOが語る、価値の分解と再構築とは

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

スピーカー
・清宮 俊之(株式会社力の源ホールディングス 代表取締役社長 兼 COO)
・子安 大輔(株式会社カゲン 取締役)
・中村 仁(株式会社トレタ代表取締役)
・瀬川 憲一(株式会社トレタ 最高マーケティング責任者)

日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、A会場、17:00〜18:00


瀬川 憲一 株式会社トレタ CMO(最高マーケティング責任者)
94年株式会社ベネッセコーポーレーションに入社。高校講座事業部、経営企画部を経て、03年新規事業開発室 サービス開発マネージャーに就任。06年クオン株式会社(旧:エイベック研究所)にマーケティングリサーチサービス部部長として入社。09年には同社取締役に。16年株式会社トレタに入社し、現在、CMO(最高マーケティング責任者)およびセールス・マーケティング部長を務めている。


 

ー トレタCMOが語る、外食産業の今とは

瀬川 日本の飲食業界は、人あたりの付加価値が小さいのが現状です。一人あたりの付加価値が小さいというのは、従業員の賃金が上げにくい構造になっているということです。

日本の労働人口は、ここ10年で10%減っていると言われています。人口減少に加えて、高齢化率も高まるばかりです。このように飲食業界では賃金が上げにくいうえに、労働人口減少で、ますます雇用が難しい現状となっています。

また、一般家庭の食料支出の中で、外食支出(レストラン、調理済み食材の購入など)は平成元年から少しずつ伸びています。しかしその中で、レストランなどの飲食店での支出は平成9年をピークに少しずつ下がっています。調理済み食材を買って家で食べるという”中食”の価値が、この数十年で拡大してきているのです。

ナチュラルローソンではイートインコーナーがあります。お惣菜を買い込んで、イートインコーナーで食べる。これは中食なのか外食なのかというと微妙なラインだと思いますが、現在では中食と分類されています。こういった事例も含めて、実は中食市場規模は8.2兆円という相当な規模になっています。

ー テクノロジーがもたらす飲食店への影響

瀬川 昨年のFOODIT2016の未来総研では、10年後飲食業界はどうなっているのだろうという話をしました。飲食店は接客、調理、場という3つの要素がテクノロジーの進化のインパクトを非常に大きく受けるだろうということを予想しました。例えばAIだったりロボットだったり、他にはVR、AR、MRを使えばどこかへ行ったような気分になれます。

今年のFOODIT2017は”生産性”がテーマです。生産性というのは創造された価値を、投下された労働力で割ったものですが、このFOODIT2017ではいかにして労働力を減らすのかではなく、創造される価値をどうやって大きくしていくかという話をしていきたいと思います。

すなわちテクノロジーで生み出す時間の余剰で、どうやって価値を想像していくか。

しかし言葉で言うのは簡単ですが、そもそも価値を想像するということは難しいことですし、未来に対して価値を見出していくことはさらに難しい。一番難しいのはわれわれの価値観がどのように変わっていくかということが非常に予想しづらいということです。ただ現状を見ればいろんな予兆は見えてきます。そういったものを少しみなさんと確認していきたいと思います。

ーここ10年でのサービスの変貌

瀬川 モノからコトへといったことがここ10年言われていますが、実はここ10年の話ではないと思っています。物質1kgを何らかの生産に投入して、生み出されるGDP価値は1978年アメリカだと1.64ほどで、これが2000年になると3.58にもなりました。ここ20数年で倍の値です。これはすごい省エネが進んだということではなく、モノが生み出す価値よりも、それらが生み出すサービスの価値が上がったということです。

例えば、数年前までは音楽を聞きたいとなればCDを買っていました。私も渋谷のタワレコやHMVなどへよく行っていました。しかし現在ではCDを買うことはありません。私はアップルのサブスクリプションサービスを使っていますが、一生かかっても聞ききれないほどの音楽にアクセスが可能です。今やCDラックを気にすることもなく、しかも毎月900円ちょっとの定額料金で、無限の音楽を聞けるわけです。

CDが無くなっていく中で、音楽業界はどうなっていくのかということが一時議論されましたが、みなさんが心配されていたようなことはあまり起こっていなくて、ロックの祭典である“ROCK IN JAPAN”では今年、4日間で4,000人が来場しました。チケット代は1日だいたい13,000円します。4日通しだと4万2千円です。さらにグッズや食事を合わせると相当な額が投下されています。こういった”唯一無二な体験”に払われるトレンドは大きくなっており、今や音楽業界を支えています。

ー スモールワールドな世界

瀬川 少し食とは違う話をします。

現代では、世の中は広いようで実は狭い。Facebookでは3.5人を介せば、特定の知らない人物にメッセージを送ることができます。みなさんもFacebookであの人とあの人が知り合いだった、と驚いた経験があると思います。今の世界は、実はわれわれが思っているよりもはるかにコンパクトになっているのです。

このことがわれわれの価値観にどのような影響を及ぼすかというと、あまり悪いことができなくなったということです。悪い噂はネットですぐに広まります。そうならないように、私たちはちゃんとしようとします。こうしてネットワーク上での行動の信頼が担保されるようになっていきました。

シェアリングエコノミー(実際に所有するものを何人かでシェアすること)の市場規模は、現在150億ドルだと見られています。今後さらにSNSが発達すると、人々の交流やシェアはネット上でより盛んになり、2025年には200倍の3350億ドルぐらいの市場を生み出すだろうと言われています。
こういった変化が、例えばホテル業界に影響を及ぼしつつあります。

ー 今やホテル業界が危機?爆発的に伸びた民泊サービス

瀬川 今からちょうど10年前、サンフランシスコで大きなデザインカンファレンスがありました。おかげで市内のホテルは満室でした。
さて、ブライアンという人とジョーという人がサンフランシスコに住んでいましたが、家賃で苦労していました。そこで「街のホテルは満室だから自分の家に泊まってもらって家賃をもらおう」とインターネットで宿泊者を募ってみたんですね。すると、なんと3名の方が彼らの家にお金を払って泊まってくれました。これに気を良くした2人はもう1人エンジニアを連れて起業を試みました。

10年後の現在、彼らはどうなったかというと、生み出したサービスには400万の施設が登録されており、191カ国、6500都市にサービスが広がり、通算2億人が利用するサービスになりました。これが“Airbnb”というサービスです。

最初は小銭を稼ぎたい家主が、ホテルの満室で困っている人を泊めるサービスでした。しかし、今や利用した人が宿泊先でホテルでは味わえない様々な体験を求めるようになってきているわけです。

実は私も体験したことがあります。部屋の鍵を返したいと思ってもいつまでも取りに来てくれる人が来ない、飛行機の時間は迫っているという体験をしました。かなり焦りましたが、なんとか自転車で鍵を取りに来てくれてギリギリ間に合ったんですけど(笑)。

私とは違って、素晴らしい体験をされた方も大勢います。現地の人しか知らないところに行けた、ホテルよりも広くてよかった、唯一無二の出会いだったなど、多くの感想がインターネットでシェアされ、ホテルのような”全て整ったサービス”に物足りなくなった人にウケました。中にはボロボロの家に泊まってみたいという人もいて、そういうニッチな人たちのニーズにしっかりアプローチできたことが、爆発的に民泊サービスを後押ししていきました。

さらにホテルはすべて自社でやりますが、民泊の業務委託を受けるサービスも始まり、例えば鍵の受け渡しや、リノベーションだけやってくれる会社がAirbnbに集まった。このように、もともとホテルが行なっていたサービスが、解体され再構築されたわけです。

ー 料理だけでなくシェフも外へ持ち出される時代?

瀬川 飲食業界にもそういった予兆が見られるようになってきたのではないでしょうか。

例えばヤッホーブルーイングでは”よなよなエール”のイベントが行われました。ここで消費されている飲食の量で見ればかなりの一大イベントで、これがレストランではないとは言いづらい状況です。こういったようにレストランから料理を外に持ち出そうといった試みが加速しています。

瀬川 すると今度はシェフ自身をレストランから持ち出してお宅へ届けよう、もしくはお宅以外のどこかに提供しようという活動も加速しています。

ー 経済学から見るイノベーションの本質

瀬川 最後に、シュンペーターという人を紹介します。この人は経済には必ずイノベーションというものがあり「イノベーションこそが経済を発展させている」ということを言った学者です。

彼は「イノベーション実行者は一定のルーチンだけをこなす経営管理者ではなくて、全く新しい組み合わせで生産要素を統合し、新たなビジネスを創造する者である」とも言っています。全然別のものを発案しろと言っているのではなくて、もともとバラバラある生産要素を新しい組み合わせでやってみることがイノベーションだということです。

さて、飲食業界の生産要素はどのように解体可能で、また再結合可能なのか。はたしてそれは新たな価値を想像することになるのか、といったことをこのセッションで話していきたいと思います。

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから