EDITOR’S REPORT

【FOODIT未来総研】ITでつながりを広げる次代のレストランが見せる外食の「希望ある未来」(その3)

ー 「飲食業界「自前主義」からの脱却は実現するか

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

スピーカー
・清宮 俊之(株式会社力の源ホールディングス 代表取締役社長 兼 COO)
・子安 大輔(株式会社カゲン 取締役)
・中村 仁(株式会社トレタ代表取締役)
・瀬川 憲一(株式会社トレタ 最高マーケティング責任者)

日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、A会場、17:00〜18:00


 

子安 大輔 氏
広告代理店勤務を経て、05年に共同で株式会社カゲン設立。飲食店や商業施設のプロデュース、飲食に関するビジネススクール主宰、食に関するアプリ開発などに携わる。


 

子安 飲食店の「自前主義」みたいなところって、一度ゼロベースで考えても良いのかなって思っています。自前主義というのは箱(店)をすべて自前で構えていて、自分で雇って、自分で料理を作って、サービスを提供するということです。それらの要素がなくなるということはないと思いますが、飲食店がすべて自前でやるというのには限界を感じています。

例えば朝食マーケットでは、とくに台湾などアジア圏では朝ごはんの外食が多いですが、これが日本でもあったらなと思っても、コンビニやドトール、吉野家など客単価が300〜500円が普通になりつつある中で成り立たせようと思うと、自前主義だと成り立たない。

それを例えばビジネス街のテナントで朝の時間だけ借りて、例えば朝3時間だけ働けるパートの方を雇って、彼女らにお弁当を売ってもらうなどすれば、朝ごはんビジネスはひょっとしたら成立するかもしれないと思っています。

もちろん利益で言ったら大したことないと思います。しかしそれらを組み合わせたらけっこう大きな利益になるかもしれない。それって朝食専門店を作ろうという話ではなくて、朝食ビジネスを提供しよう、プロデュースしようというのは、飲食サービスの再構築なのかなと思います。

中村 つまり、すべてを自分たちで用意するのではなく、あるものを編集してキュレーションして提供していくってことですよね。

子安 飲食店にとって何かを捨てるというのは、バランスを取りたい飲食店にとってはやりづらいですし、外に委託したくないものってあると思います。

中村 そもそも箱持ちたいですもんね(笑)。そこの固定観念を外したときにいろんなものが見えてくるってことですよね。

子安 そういうことだと思います。僕の中では手ぶらBBQが気になっていて、あれって一時的なブームというよりかは、時代ニーズの変化だなと思っています。何を意味するかというと、仲間内でワイワイ騒ぎたいときに、既存の飲食店ではもう満足できなくなっている人が世の中にこれだけいるということです。

皆さん手ぶらBBQが自分のビジネスに競合していないと思われているかもしれませんが、たぶんパーティー需要が相当に奪われていると思います。行く側からしてみると、本当に美味しいものを求めて行くかというとそこではないと思っていて、全体の体験をうまく提供しているから、ああいったものが流行っているのだと思います。

ー 飲食業界の止まらない“ニッチ化”現象

中村 いま、飲食業界のトレンドってどんどんニッチ化しているじゃないですか。昔の大手居酒屋チェーンの全盛期とかは、その店に行けばだいたい対応できる幅広い商品があって、みんなで“飲みに行く”というのが目的だったので、お店があればどこでも良かった。

しかし今はどんどん専門化していて、例えば焼肉店も、赤身専門だったりホルモン専門だったりどんどんニッチ化して、ある種もうニッチ化は行き着くところまで進んでいますよね。

その最小単位になっているはずの飲食店ですらもはや対応しきれないくらいニッチなニーズが出てきたときに、それを解決するのが飲食店ではなく外部の、それまで競合だと思っていなかったプレーヤーがそのニーズを満たし始めるという大きな流れが来ていますよね。

子安 まさにそういうことです。飲食店でなにか新しいことをやろうと企画をするとき、だいたい“新業態開発”という言葉にたどり着きます。それを突き詰めるとマニアックな業態にどんどんなっていって、本当に数年スパンで商売が成り立つのかというところまで話が落ちていきます。

新しいこと考えなければいけないときに“新業態開発”とか“既存店リニューアル”のようなありきたりな話ではなくて、もっと深いところから一回掘り返して、各要素の重要性を再検討して、それらを組み立て直す必要があると思います。

ー 一晩15万円!驚愕な値段設定の裏側とは

瀬川 要素の一つとして最近コミュニティ化も注目されていますが、清宮さんのところではどのような取り組みをしていますか。

清宮 飲食店の経営って朝準備して、営業して、締め作業をして帰る、というお店の中で完結することが多い業種ですが、われわれの地方の店舗では近くの小学校を訪問してラーメンや餃子作り体験のワークショップを親子含めてやるという取り組みをしています。海外でも3年ほど前からアジア圏で行なっています。自分たちが地域に寄り添う、地域のコミュニティーの中に入らせてもらうというのは定期的に行なっていますね。

瀬川 そういった様々な要素の中で、これは足したら面白いんじゃないかというアイディアは中村さんありますか?


中村 仁
パナソニック、外資系広告代理店を経て、「豚組」「豚組しゃぶ庵」などの繁盛店を世に送り出す。10年「外食アワード」受賞。11年、料理写真共有アプリ「ミイル」をリリース。13年に株式会社トレタを設立し現在に至る。


 

中村 新しいアイディアというわけではないですが、今日のイベントで公演されたダイニングアウトさんの施策には驚いています。ダイニングアウトって一晩の食の体験なのですがこれが1人15万円ほどしますが、しかもチケットを売り出してから15分程で売り切れてしまう。15万で1食ですよ。

これって飲食店の発想では出てこなかったもので、実際ダイニングアウトの企画は広告代理店の人がやっているわけです。ふつうの飲食店の発想で出てくる値段設定ではないし、そもそも飲食店はお店を構えてそこで長くやるんだよねっていう先入観で考えている限り、そういうゲリラ的に「一年で一回どこかでやります、一回やったら終わりです」っていうイベント的なやり方も、たぶん地続きな発想では出てこないと思います。

つまり、飲食店に何を求めているかという利用する側のニーズ、どういう目的で飲食店を使うのかという観点でユーザーのニーズを分解していったときに、ダイニングアウトにたどり着いたのでしょうね。これが飲食店の人にはできなかったというのがショックで、いったん僕らの持っているお店への先入観を頑張ってリセットしてゼロベースで考えてみると、ああいう企画もできるのではないかなと思います。

子安 僕もその講演を先ほど聞いて、タイトルが「レストランの未来は本当にレストランなのか」でしたが、そこが意味するのはそういうことだと思います。祝祭など特別なイベントがあったときに、いままで高級フレンチレストランで行っていたものが地方の祝祭感でやるようになったり、よなよなエールなどのイベントに行くようになったり。

生産性っていうところで見ると一晩で15万ってすごいじゃないですか。こういう発想が増えると、リターンを増やすという方法で生産性を上げるという考えも増えるかもしれないですよね。

ー 一般人もプロの料理人になれる?

瀬川 尖っていく方向を模索することが求められているのかもしれませんね。

例えば「キッチハイク」っていうサービスがあるじゃないですか。料理人じゃなくて、どんな素人でも料理を提供したいという人と、美味しいかも楽しいかもわからないけどそれでも食べてみたいと思う人をマッチングするサイトがあったりするんです。

中村 知らない人も多いかと思いますが、ヒッチハイクじゃなくてキッチハイクというサービスで、オンラインのSNS系サービスです。プロでも素人でも関係なく自分の料理を振る舞いたい、食べてほしいという人が、募集をするわけです。それに対してそれを食べたいという人とマッチングします。場所はレストランを借りてもキッチンスタジオでも自宅でも良いわけです。もはや誰がプロで誰が素人かわからない、そういうフラットなマッチングができるのがキッチハイクというサービスです。まだまだ小さな規模なんですが。

子安 僕は流行る可能性はあると思います。それは観光地から起こる気がしていて、観光地に行ったときに地元のものを食べたいと思うじゃないですか。観光客向け居酒屋に行ってがっかりするケースが多い中で、その土地の料理自慢の人の料理のほうが食べたいと僕は思います。営業許可の問題もあるので飲食店形態になることはないと思いますけど、イベントっぽく宿泊体験に料理がついていますってなるとそこからブームが始まるかもしれないですよね。

ー さいごに

瀬川 全然なさそうなところから、ブームが来るだろうというのが先ほどまでの話でしたが、最後に清宮さんの今後の飲食業界の見解はいかがでしょうか。

清宮 再定義とか、価値の組み換えとか、例えばお店の雰囲気なのか料理なのか、いろんな定義があると思います。僕らが置かれている状況では、やはりゼロベースで考えることが大切だと思います。ゼロまでは行かなくても、10年後をイメージしながら考えていくっていうことが大切だと思います。

そのときには、日本の国がどういう判断をするのかが非常に重要だと考えています。今もインバウンド需要とか言われていますけど全然そんなことなくて、観光大国のフランスではインバウンドがもっと多いです。あれだけ小さな国であのような取り組みができるのはすごいですが、日本が国として「観光大国化」への道を進むのであれば、観光と外食はもっと密接になると思います。

また、今後は自分たちの店、自分たちの会社だけで考えるのではなく、自分たちのブランドのあり方や価値を総合的に判断しながら舵を取らなければいけないのかなと思います。そこを踏まえて価値の再定義をしていきたいなと思います。

子安 今日の話で触れたように、飲食店ではない、新サービスを作ろうという動きが出てきていると思います。もちろんそれらは僕らが考えなければならないテーマなのですが、やはり異業種の方がうまくやってしまいそうな気配はしています。そんな中われわれ飲食店がどんなアプローチができるかというと、やっぱり自分たち強みはここだから徹底的に掘り下げようという考え方もあると思います。

そのアイデアではもちろん料理に先鋭化していくところもあると思いますけど、コミュニケーションやコミュニティっていう要素はもう一度徹底的に掘り下げる価値がありそうな気がしています。

やはり、人が飲食店に行く理由を、人と会いたい・人と触れたいからだとすると、ただふつうに接客して店員の感じが良いねというくらいでは、全然これから先レベルが足りない。

本当に店を中心としたコミュニケーションづくりをしようという覚悟があれば、お店側のアプローチも変わってくるだろうなと思います。そうすると新業態や新サービスではなく、既存の飲食店の場を使って、いかに集客力を持たせる場にしていけるかっていうのを考えていかなければならないんじゃないでしょうか。

中村 飲食店というものがこういうものだよねというのが数十年にわたってつくられてきました。その中で僕らはプレーしてきましたが、飲食店におけるこういうものだよねっていうのがテクノロジーによって揺さぶられるということが少しずつ起きていると思います。

当たり前のように箱があって従業員がいて料理があってっていう組み合わせの中でやっていこうとすると、やはり今までのようにニッチ化していく方向しかありませんでした。

あえて「料理にこだわるので料理以外は捨てる」ということであれば、また全然違う事業の作り方ってあると思います。料理を徹底的に極めたときには、もう箱もいらないしサービススタッフもいらない。料理だけなんだ!となったときにじゃあどういう価値の提供の仕方があるのか。

今まではそんなこと無理だよねって思っていたのが、テクノロジーを使うと意外と簡単にできちゃったりする。というところが日々、僕らにとってトライしてみる価値があるのかなと感じました。

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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