EDITOR’S REPORT

進化型レストランの世界観〜HAJIMEオーナーシェフの壮大なビジョン〜(その1)

ー エンジニアからミシュラン3つ星オーナーになるまでの苦悩

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

・スピーカー
米田 肇 氏(HAJIME オーナーシェフ)
君島 佐和子 氏(料理通信 編集主幹)

・日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、A会場、16:05〜16:50


 

君島 佐和子 氏
『料理王国』編集長を経て、2006年6月、クリエイティブフードマガジン『料理通信』を創刊。料理人、パティシエ、醸造家、生産者といった食の担い手を「クリエイター」、彼らの活動を「クリエイション」と位置付け、仕事の底流にある考え方に注目しながら、国内外の食の最新動向を発信している。編集長を経て、2017年7月から編集主幹に。辻静雄食文化賞専門技術者賞の選考委員。デザイン専門誌『AXIS』、マガジンハウス『アンド プレミアム』でコラムを連載。日経新聞の日曜朝刊「NIKKEI The STYLE」に寄稿。著書に『外食2.0』(朝日出版社)


 

君島佐和子氏(以下、君島) 私の米田さんに対するイメージは“フロンティア”だと思います。領域を拡張していく人。従来の料理人さんとは思考回路がちょっと違うのをいつも感じています。テーマである生産性革命についても、違った角度から米田さんなりの意見が聞けるかと思いますので、今日はよろしくお願いいたします。

米田肇氏(以下、米田)よろしくお願いします。

米田 肇 氏
大学卒業後、コンピューター関連のエンジニアを経て料理の世界へ。「ガストロノミーを通して、人類の未来に貢献する」というビジョンを掲げ、様々な分野に挑戦をしている。レストランにおいては、緻密に計算された高い技術、革新性、妥協なき完成度と料理を通して表現される壮大な世界観が高く評価され、Foodie Top 100 Restaurants、Asia’s 50 Best Restaurants、OAD Top30 Japanese Restaurants、世界を代表する100人のシェフ「100 chefs au monde」に選ばれるなど世界で注目されている料理人である。昨年、辻静雄食文化賞専門技術者賞、近畿大学・文化・芸術部門賞を受賞。


 

君島 米田さんは、まずエンジニアとして就職した後、料理学校に入学されました。米田さんには外食産業、料理の世界はどのように映っていたんですか。

米田 私が料理人になろうと思ったのは、小学生の頃から。ずっと料理がやりたいと考えていたんですけど、実際は就職をしてエンジニアをやってから料理人になりました。私の入った会社は結構いい会社で、待遇もすごく良かったんです。労働環境もすごく良かったんですけど、料理専門学校を卒業して最初に就職した外食企業はその真反対でした(笑)。

君島 その頃もっとこうした方がいいんじゃないかとか、なんでこんなことやっているんだろうとかは思いませんでしたか。

米田 その感覚っていうのは自分が経営するまではずっと思ってました。教育システムに関しても労働環境に関しても、これはないんじゃないかっていうのが多くありました。

君島 私が米田さんを初めて取材した時、まだ若かったのにもかかわらず労働環境や労働条件について他の料理人の方とは違った考えをされていたのを覚えています。労働環境や労働条件が良くならないといい人材が入ってこない。結果的に業界が向上しないということを考えていらっしゃいましたが、独立された時、どういうお店にしようと考えていましたか。

米田 雇われていた頃、自分自身の勉強で一流店にずっと行っていたにも関わらず、給料が一流じゃないんですよね。そこがおかしいんじゃないかと思いました。やっぱり一流の企業だったら、給料も一流で、待遇も一流じゃないとっていう考える部分がすごくあったんです。なので自分自身が店をやるんであれば、給料も待遇も一流で、一流の人材と一緒にやっていきたいなとずっと思っていました。

君島 独立後オープン当初にやられたことはありますか。

米田 私自身がエンジニアから料理人になるときに、両親に「ちょっと料理の世界に行こうと思うんだけど」と言うと「給料は安いし、休日はないし、長時間労働だぞ」って言われたんです。この3つが僕の中でもポイントだったんです。オープン当初はずっとこの3つを追いかけてきました。

給料を良くしよう、休日を多くしようというところまでは良かったのですが、問題は長時間労働でした。そこの問題というのは多くの飲食店が一番悩んでいるところだと思います。

今現在はちょっとでも労働時間でトラブルがあるとすごい問題になりますので、じゃあそこをどうするのかということを本当に考えなければなりませんでした。

君島 2012年に店名やお店のスタイルをフランス料理から一変させましたが、その際「1日1営業、料金を2倍」ということをされましたがこれはどうだったのでしょうか。

米田 2009年、開店から1年5カ月でミシュランの三つ星を獲得したんですが、その頃は昼も夜も満席で、1日400本くらい電話があったんです。朝から晩までずっと働かなきゃいけない。雑誌にも載って有名になり、休日に何処かへ行くと「肇さんですよね、憧れです!自分もあんなふうになりたいです!」と言われるんですけど、自分自身はどうかというと、もうフラフラなんです。

夜終わるのが夜中の3時とかで、朝も6時くらいから始めるから3時間くらいしか時間がない。その中で新しい料理なども考えなければいけない。一方、うちの従業員はどうかと考えてみると、みんなフラフラで掃除とか料理とかしてるんですね。

こんなお店をみんながやりたいと言い出したら、日本の飲食店が全部そうなっちゃうんじゃないかと思いました。これは良くないんじゃないかと思って、別の方向から考えてみました。ゆっくり考える時間があって、きちっと良いものを作って、みんなもちゃんと生活ができる方法は何かないかと考えた結果、1日1営業で価格を上げようという方向にたどり着いたわけですね。

君島 値段を上げた際、賛否両論の声があったと思うんですが、値上げの背景はあったんでしょうか。

米田 基本的にお店は客単価と人数で売上ができるわけですが、多店舗展開をするなら客数は増やせますが、1店舗でやる場合おのずと客数は限られます。30席だったら30席が上限です。そこで売上を伸ばそうと考えると、値上げをするしかないんです。そして価格を上げることによって、別の部分に投資をやっていくことができる。

まず、良いものを出すことができる人数ってどれくらいかっていうのを設定して、それに経費としてどれくらい必要かというのを考えて、じゃあ価格はこれくらい必要だろうと決めました。内容をどうしようかというのはそれからなんです。

最初の頃は、内容に価格が見合っていませんでした。そこから改善を繰り返すと、ランチとディナーをやっていた頃はずっと満席だったんですけど、その翌年は急激に客数が減って、平日とかは1日2名とか4名とかで毎月150万単位くらいで赤字がずっとあったわけです。そこから内容を少しずつ改善して、翌年くらいからやっと利益が増えていきました。

君島 私が取材したとき、非常に印象的なお話をされました。料理ってときどき芸術的な表現がされることがあります。そして料理人をクリエイター的な味方をすることがあります。
その中で米田さんは、料理を原価で語りますよね。

原価率が高いほど、それは善であるというのがレストランの世界ではあって、でも「画家が書いた絵を原価では考えませんよね」と言われたときに確かにそうだなと思いました。画家が描いた絵の原価は絵の具やキャンバス代など。しかし、彼らの絵は何百万から何千万っていう価格になります。アートの世界では原価では語られません。それをレストランで考えてみるとどこまで行っても原価で考えているうちは流通じゃないか、と米田さんは言われました。その指摘からレストランの生産性ってどうなんでしょうか。

米田 先ほどの話を言うと、原価率がどんどん高くなっていくほど流通業になるわけです。流通っていうのはものを右から左へ持っていくとお金が発生する。原価率が高くなれば、利益を出すためには1回転ではなく2回転3回転ってやっていかないといけない。われわれのお店は1回転ですから、それをやってしまうと大変なわけです。

そうなったときに、じゃあケータイ電話はどうなのって考えたときに原価はそんなにかかってないんです。でも高いですよね。IPhone6から7、8,Xになっていくと価格が上がっていきます。原価は変わっていないんですけど内容が変わっているんですよね。

それに対して、例えば10万円でも良いんじゃないかと思った人間は買うわけです。だから大切なのは原価じゃないんです。同じ材料かもしれませんが、ちょっとかっこいいものは高いんです。上手に作ってあるものは高いんです。

だから「ニンジン一本でいくらの料理ができるのか」っていう挑戦をやっていくべきだと思うんです。価格を2倍3倍にしたい時、提供する料理の量を増やせば良いというわけではないんです。何をしないといけないかというと、内容を考えることなんです。

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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