EDITOR’S REPORT

進化型レストランの世界観〜HAJIMEオーナーシェフの壮大なビジョン〜(その2)

ー HAJIMEオーナーシェフが考える労働時間管理の欠点」

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

・スピーカー
米田 肇 氏(HAJIME オーナーシェフ)
君島 佐和子 氏(料理通信 編集主幹)

・日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、A会場、16:05〜16:50


 

君島 料理の価値や価格を考える時、大切なのは量ではなく、内容を考えることだということですね。この「内容」というのは創造性というところでしょうか。

米田 そうですね、料理を召し上がったあとに、価格よりも価値があったかというところが問題なんです。ようは原価がいくらで、いくらで買ってきたのかということだけを問題にするなら、そこに料理人の存在って必要ないですよね。

どの人が作っても一緒になってしまう。でもある人がつくったら良くなる、別の人がつくったらすごく良くなる。そこに料理のテクニックだったりとか、創造性だったりとかが必ずあるはずなんです。そこを買ってもらわないと。

君島 米田さんが他のシェフと違うところは生命学や生物学、宇宙学などにも思考領域を広げているところだと思いますが、その意味や効果はありますか。

米田 これは単に自分の好奇心があったからですが。料理を考える場合に新しい料理をつくろうと思うと好奇心が必要になります。新しい分野を攻めていこうっていう。でもある分野をすごく深くしようと思うと今度は探究心が必要なんです。

両方考えた場合、単に探究心っていうものをテクニックだけで料理の見た目をこういうふうにするとか、材料をこういうふうに切るとかいうところを、さらに切るとはなんだろうっていうところを顕微鏡レベルで考えよう、分子レベルで考えようっていう風に探究心を持っていけば、色んな考え方ってできると思うんです。好奇心で考えると、これがどこにつながるんだろう、どうなっているんだろう、どういう影響をあたえるんだろうといろいろ考えていくと、宇宙まで行ってしまったっていう感じです。

君島 なるほど、ところで生産性を向上させるためのポイントを3つ米田さんに上げてもらいました。まずひとつが「IT化が進むと人間は空っぽになる」ということですがこのあたりはどうでしょうか。

米田 例えばコンピュータの中に入っている計算システムだったりとか、今はいろんなものがありますよね。それを利用するっていうのはすごい良いことだと思うんですよね、スピードは上がったりとか正確性が上がったりとか。

例えば厨房で分量を手で計算している子がいたら、こっちの機械でやれよと言うと思うんですよね。人がやるとミスが起こるわけで、電卓でやったほうが正確です。それが進化していくと、自分でやんなくて良いことが増えてくるわけですよね。

ただ、全部機械がやってくれるからとなると、例えば子供の頃からそうなってしまうと、自分自身の能力を高められるのにもかかわらず、周りに機械がいっぱいあるがために成長できないんじゃないかと思ったわけです。

しかし仮に学校がそうなったとしても、飲食業は逆で、自分に技術をインプットしていく世界なんですよね。いざお店に入って「覚えろ」って言われてもわからないんです。周りの人に言ってもらわないとわからないっていう状態になり得るんじゃないかと。そこをいかにどのように教育していくかっていうのを考えていかないと、システムは良くならない。

システムは何のために良くなるのかというと、クリエイティブなことをコンピュータと一緒に考えられる人のためなんですよね。コンピュータと一緒に仕事をやり始める人っていうのはそっちの方が価格も安いし失敗も起こらないので、どんどんそっちの方向に流れていく。

新しい調理器具があったら厨房に持ってきてどんどん入れていって、入れていけばいくほど料理人が要らない時代が来るかもしれない。で、料理人を切った分のお金をまたコンピュータやAIに投じていく。どんどんスピードが上がっていくわけです。

そうなるとコンピュータと一緒に考える人と、あまりコンピュータを使わない人の差がすごく開いてくるんじゃないかなとも思うんです。

どっちのほうがスピーディにモノを出していけるかって言ったら、コンピュータとやってる人間なんです。そこがちょっと難しい点だと思います。ただ、現在の多くのお店っていうのは、楽なところだけ機械に任せようとするのが間違っているのではないかと。今後どのように歩んでいくかっていうところを整理して考えたほうが良いと思います。

君島 コンピュータを道具として扱うのではなく、思考をコンピュータと一緒にするのであれば、ということでしょうか。

米田 結局、コンピュータやロボットに取って代わられる人っていうのは必ずいるわけです。どんどん進化すればするほどそういう人は出てきます。新しいものを考える人は、そういうものを使ってどんどん先に行くことができる。

現在、飲食店の90%くらいで作業を人間が行っている。今はまだ10%くらいしか機械を使っていないんですが、将来的に20%、30%になったときに、人的作業を行っていた人間は何をすべきかというのを考えないといけないと思います。

君島 具体的には何をすればいいでしょうか。

米田 結局ロボットを「使う」側に移るために、勉強は大切だと思います。ピュレにするにしても、昔だったら30分くらいかけてやっていたものが、今はミキサーに入れて10秒でも押せば、そっちの方が酸化もしにくくて香りもあるっていうのができる時代じゃないですか。そうなったときに今までピュレづくりでグリグリやっていたテクニックが必要なくなるわけです。

だから新しいものをつくる、お客さまを感動させる方向に関してはそういうのをどんどんやっていったほうが良いとは思うんですけど、新しいものが出たときに、導入できない場合に問題が起こるんじゃないかと思います。

君島 空っぽにならない人間になるということですね。

米田 まずは勉強させていかないといけないんじゃないかなと思います。その上で、それを使いこなせるという状態に持っていけばいいと思います。

君島 ふたつ目の項目として「学習には時間がかかる」とおっしゃっていらっしゃっいましたね。

米田 ようは長時間労働が良くないっていうふうになっていて、例えば労働時間を短時間にしようっていう方向になりますよね。

このことを学校教育を例にすると「学校ではこの時間しか勉強しちゃいけません」となる。すると、頭がいい子は伸びるんですけど、頭が良くない子は家でも勉強しなきゃいけなくなる。でももし家でも勉強をやってはいけないとなったら、頭が良くない子の成績は下がりますよね。

だから、今の労働時間を決めてしまうやり方っていうのは実は天才優遇対策なんです。「なかなか伸びない」っていう子に関しては、もう切り捨てちゃっているんです。お前ら成績悪いんだから仕方ないじゃないかって。

頭がいい子は短時間で覚えられるかもしれません。でも、人っていうのは簡単に覚えることはできない。覚えられない人間は努力をしなければいけない。その部分をどうやって教育に揉み込んでいくかっていうのはよく考えなければいけないことです。

小学校っていうのはみんな学校行ったあと、家でまた勉強してるじゃないですか。それでやっと覚えられるっていう状況なのにもかかわらず、社会にいくと、それはダメだっていう話になってきたときに、じゃあもうどうすんだって。それが今の社会なんじゃないかなと思います。

もちろん、強制的に労働するっていうのはおかしいとは思いますが、一番いいのはやりたいっていう人がやって、やりたくない人っていうのはやらないのが良いのかなって思います。簡単にササってできる人はやらなくていいですし、できない人間はもっとやりたいのであれば、できるような環境にしてあげないと、本当に覚えたいのに覚えられないという人たちが出てくると思います。

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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