EDITOR’S REPORT

進化型レストランの世界観〜HAJIMEオーナーシェフの壮大なビジョン〜(その3)

ー HAJIMEの若手は「自分から動き出す」

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

・スピーカー
米田 肇 氏(HAJIME オーナーシェフ)
君島 佐和子 氏(料理通信 編集主幹)

・日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、A会場、16:05〜16:50


 

君島 ちなみにHAJIMEではどのような教育体制・労働体制なんですか。

米田 教育に関してはやっぱり、2パターン必要なんですね。頭を整理して考えるためには、言語できちっと教えなければならないですけど。食材から何か情報を得るっていうのは、言語じゃないものからの情報を自分から取りに行くことなんですよね。空気を読んで動くとか、教えていない情報をざっとあるところから自分でつかむ能力。これが今は弱いんです。

なぜかというと、今の義務教育では丁寧に教えるから。われわれの時代の先生はぐちゃぐちゃで何を言っているのかわからなくても自分で何とか調べなきゃいけなかった。

でも、今の時代の先生って、そういう先生は良くないって言われてしまうので、とても分かりやすい教え方をする。すると生徒は分かりやすく覚えてしまう。「何なんだろう」って考えなくても頭に入ってしまうわけです。

でも実際社会に出ると、なにもないところから何かを感じ取って何かをするということが多くあります。むしろほとんどがそうじゃないですか。そうなったときに、動けないんです。指示をされないと動けない。

だから、結局教育をする場合は言語でちゃんとこうですよって言ったあとに、ここに関しては自分で一度何が起こっているのかを考えてごらんっていうやり方もやらないとダメなんじゃないかと。言語でしっかり伝えることと、自ら何かを掴み取らせること、この両方が教育には必要なんだと思います。

君島 HAJIMEの従業員からは米田さんの話が長いという声もありましたが、かなり丁寧に考え方を伝えているんですか。

米田 まあ、根本的なところがいちばん大切だと思いますので。どうしてそれをやっているのかっていう部分の理由の理解なしに、テクニックだけ渡していても多分わからないと思うんです。

君島 魚の捌き方のお話も聞きましたが。

米田 小さい魚があったときに、若い子にやってもらうとコロコロ動かすわけです。あっちでもないこっちでもないとまた包丁入れてひっくり返して。じゃあそれが10mくらいの魚だったらどうするんだ、ひっくり返すのは大変だから一回で捌こうとするでしょっていうふうな教え方ですね。

君島 テクニックではなく考え方の導きなんだなと思いました。

米田 私自身が物覚えがあまり良くなくて、そこまでササッとできたほうではないんですね。そうはいっても前に進みたいとなったときにいつも葛藤があったんですよ。なかなかできないけどどうしたら良いんだろう、どうすればもっと良くなるんだろう。っていうのを日々考えてきたときに、自ら気づいた部分を言ってあげたら良いんじゃないかと思って。そこの部分を教えてあげている感じです。

君島 従業員だけでなくSNSなどでも全てのメッセージに応えるということをお聞きして驚いたのですが、愛情をかけるということがやはり大切なのでしょうか。

米田 教育の一番のところってそこじゃないかなって思います。最初の頃は何もできなかったですし、周りは19歳で元気のいい先輩がいて、ばりばり動いてる。私は26,27,歳のときくらいに入ったんですけど、知識があっても体が動かないんですよね。もう何やっても失敗するわけです。なに持っても落とすし、切っては遅いし、12時に準備しろと言われたのが12時30分を回っているぞと怒られたこともあります。

結局何もできなくて1年くらい経ったときに「どうせできないんだろお前」みたいな感じで見られて相当に落ち込んだことがあったんですよね。だから愛情をかけるということに関しては、従業員に対しては一緒に働こうと思って雇ったのであれば、愛情はお金はかからないですから、どんどん愛情をかけていったほうが良いんじゃないかなとはずっと思っています。

君島 3つ目のポイントは、働くものによっては働き手を選択するということですが、自分が働くのか、スタッフが働くのか、外部のスタッフもしくはAIなどが考えられますが、お客さまがどう感じるかという視点が大事ということですが。

米田 これから新しい技術がどんどん入ってくると思います。10年くらいで相当変わると思うんですね。でもやっぱりゲストがどのように感じるのかっていうのが一番ポイントだと思うんですよね。

AIやロボット化が進んでいったとしても、例えばロボットのサービスは嫌だとか、そういったサービスはやめるべきだと思います。人間というのは感情があるので嫌なことは嫌なんですよね。どんなにロボット化して経営が改善されて労働環境が良くなったとしても、お客さまが嫌というものは絶対良くないと思います。

だから最終的にお客さまの感動だったり、そこにたどり着くためにはどのような手順を踏むか。人間が良いんだったら人間を置く、ただそのバックヤードに関してはコンピュータを置いたりとか。

どっちが良いのかじゃなくて、今後は絶対両方やっていかないといけないんです。調理でも、高温調理が良いのか低温調理が良いのかと昔よく言われたことがあるんですけど、両方必要なんです。両方使って、いかにしてお客さまが感動するポイントに持っていくかということが大切なんですよね。どっちかをしたから良い答えが出るってわけじゃなくて、いちばん大切なのはポイントをどこに設定するか、そのためにどのような方法があるのかっていうところから考えていくっていうことが大切じゃないかなと思います。

君島 現在HAJIMEではどれくらいコンピュータが入っているんですか。

米田 オープン当初に比べるとだいぶ入ってますね。情報共有の面に関してはコンピュータをそこら中において、そこで入力をして全員で共有できるようにしています。

君島 働く環境が向上したという意識はありますか。

米田 働く環境というよりも、良いものを作るために導入しているというのが今は多いですね。私が修業を始めたときと現在とでは、実は生産性は上がっていないんですよね。

なぜかというと、料理は結局人がつくっているからです。われわれがお客さまの目の前で作ったものを出しているからです。作ったものを置いて、送って、どこかに発送できるっていうものに関しては、ネットの社会では24時間ずっと販売することが可能なので良いんですけど、私たちは目の前のものを自分たちで作って売ってるので、生産性に関しては上がってないんじゃないかと思います。

ただ今まで、情報が整理されていなかったところが整理整頓されているので、何か情報を引っ張り出すときに検索ができる。情報を共有したい時は全員でサッと共有ができるので、この子には言ったがこの子には言っていないといったことがないのは良いと思います。

君島 今が過渡期ですね。

米田 過渡期だと思います。今後10年後20年後はガラッと厨房は変わっていると思います。半分くらい人間はいないけどロボットが入っていて、人間よりも正確にやると思います。

人間は自分の感覚でやるのでミスが起こります。ミスが起こったところから面白い発想ができるんですけど、一度完成度が高いモノを作って欲しいとなった場合はロボットの方が確実にやっちゃうわけです。だからそこで今後どのように進んでいくのかというギリギリのところに来ていて、今後きちっと考えていく必要があると思います。

君島 また米田さんはこういう時代だからこそ個性が大切だと考えていらっしゃいますよね。

米田 料理がネットに載ってしまえばすぐに同じものを作ろうとする世の中で、そうなるとものを生み出すときにしんどくなるんですよね。いつも情報を見て、いつも海外に行って、新しいお店を見に行ってっていうふうにしないといけなくなってしまう。

そうじゃなくて自分が本当に美しいと思うものは何なんだろうとか、自分の面白いと思うことはなんだろうということを考えて、根源のところをよく考えることによって、内側から新しいものを作るというところからの発想を大切にしているので。自分自身が何なのかということをよく考えることで、周りにはないものができるんじゃないかと思っています。

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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