EDITOR’S REPORT

八芳園の生涯顧客化への取り組みとは(その1)

ー 結婚件数1,000件が2,000件に。式場を飛躍させた井上氏の秘策

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

スピーカー:井上義則
日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、D会場、15:00〜15:45


 

井上義則 氏 株式会社八芳園 取締役専務総支配人。1970年⽣まれ。
ブライダル企業へ就職し、サービス・営業・企画・マーケティングを経験後、システム会社へ入社。ブライダル企業の業務基幹システムの開発・販売・コンサルティングを⾏う。2003 年⼋芳園に入社。当時、年間挙式披露宴組数を 1000 組前後まで下げていた同社を、4年で2000 組まで回復。その後も 2000 組以上を 6 年連続で達成させ、単独式場では⽇本でトップクラスの組数を誇る式場へ。現在は、次世代を担う事業として、業界に先⽴ち⽣涯顧客の事業化に着⼿。具体的な戦略とコンテンツで実績を上げ、2016 年 5 月には、「ともに歩いていくアプリケーション」をリリースし、顧客との⽣涯にわたるコミュニケーションプラットフォームを創出。また、企業ミッションである「OMOTENAHI を世界へ」を実現し、東京の MICE 拠点を形成すべく、ユニークなビジネスイベントのコンテンツの開発、企画・プロデュースを事業化。2000名を超える全館貸切のビジネスイベントや、インセンティブパーティの企画、⽇本文化体験型イベントのプロデュースなど、ユニークでありながら驚きのあるビジネスイベントの価値創造に挑戦している。


 

八芳園は、今年(2018年)で75周年を迎える歴史のある式場です。12,000坪の敷地を誇る日本庭園を有し、昔は大久保彦左衛門(江戸幕府の武将)が余生を過ごした場所と言われており、日立製作所の創業に関わった1人とされている久原房之助が庭園の9割を手がけたと言われています。

高度経済成長期には日本の4大式場の一つとして、ウエディング業界を牽引。しかし・・・

「私が入社したちょうど14年前、年々低下していた婚姻件数が、いよいよ底をついて1,000組となりました。今だから言えますが、その頃の八芳園は売上40億円に対して、60億円の借金がありました。このままでは、いつ外部からファンドや運営会社が介入してきてもおかしくない状況でしたが、なんとか自力で業績を立て直すことに成功しました。入社4年目の時、婚礼件数は入社時の倍である2,000件を突破しました。しかし当時はハウスウェディングといって一軒家を貸し切るスタイルが流行りで、その波に乗って上場する会社も多かったですね」

ー 起死回生の「労働集約」とは

そうした時代環境のなか、どのようにして危機を乗り越えたのでしょうか。

「人を足りないところに回していく、“労働集約”で解決を図りました。それまでは失敗も多く、入社直後はとにかく必死になってやっただけなので、披露宴のスタート時間が守れない、料理が出てこないなど次々とクレームが発生しました。月曜日から金曜日までクレーム対応に追われ、時には6時間ぐらい正座したり、玄関先で塩をまかれたりすることもありました。結婚式は一生に一度のビックイベントなので小さなミスでも大きなクレームにつながってしまうのです。

それらを打開するため、私はいよいよ値上げを行いました。婚姻件数はなんとか落とさずに持ちこたえ、値上げにより資金源が増えたことで、足りないところの設備投資や人材確保に資金を回すことができたのです。そして、自分たちのサービスを細かく分析し、手が足りていないところに人材を配置していきました」

その結果、年間2500組以上の婚礼件数を誇るようになり、日本で最も稼働率の高い式場へと変貌することとなりました。的確な人員配置と、値上げによる収益性の向上が、八芳園を復活させたのです。

ー 劇的なV字回復をもたらす”火種”の存在

「再生を考えるときに、僕は何を見るかというと、いつも必ず”火種”(=強み)を見るようにしています。現場を歩いていると必ず火種はある。そこに最大限フォーカスするようにしています。事業再生を考えた時は、どうしても数字ばかりを見てしまうんですよね。結局その数字を作るのは従業員なので、彼らの中に必ず活かせる火種はある、と。その中でどこにフォーカスすべきかという問題です」

八芳園では、1人の料理長にフォーカスを当てました。1人の料理長が広い視野でやっていくことで、ジャンルを超えた様々な料理を提供できたといいます。料理長の広い視野にフォーカスを当て、その強みを最大限に活かそうと考え、プロモーションをかけ、件数を伸ばしていったわけです。

「婚礼というのは前受金制度なので、売上にはなっていなくとも、資金は先に入ってきます。その資金で投資計画や採用計画まで考えて実行していくんです。そうして徐々に復活していきました。だいたいブライダルやホテルの再生案件はそういう形で臨んでいます。フォーカスの当て方がやっぱり大切で、再生を考えるときに、原因を羅列してそれを潰していこうとしますが、それを潰すには時間がかかります。それよりも、まず火種にフォーカスして、そこを徹底的に燃やして火を大きくする。それを労働集約の力でサポートする事が重要です」

ー 婚姻件数2,000件突破の裏側

「婚姻件数が2,000組を突破した年、ウエディングプランナーの一人が「井上さん、私の担当で新婦に2人の母がいます」と言ってきました。どういうことかと尋ねると、産みの親と育ての親がいるとのことでした。結婚式には育ての親が出席するのだが、どうも新婦さんは産みの母親にも自分の嫁に行く姿を見せたいなと思っている状況だったと」

すぐにスタッフを集めミーティングを行って「結婚式は何時だ」「日曜日か」「じゃあ日曜日の前の日の土曜日に、産みのお母さん呼ぼうじゃないか」「ところでドレスはどうする」「当日育てのお母さんに見せる同じものを用意しろ」「ブーケもプレゼントしよう」「お金の問題じゃない、私たちみんなでお祝いしてあげよう」と話し合いが進み、本番の前日に、産みのお母さんのために従業員総出で結婚式を行ったそうです。

「当日、チャペルで行われた祭壇では、産みのお母さんが花嫁のベールを上げてあげました。花嫁さ
んが「産んでくれてありがとう、明日私はお嫁に行きます。」と伝えました。その瞬間、その話を聞
いて駆けつけたスタッフたちでフラワーシャワーをやりました。この瞬間、挙式が2,000組突破しま
した」

従業員がセクションを越えて「自分も関わりたい」と思えるように、労働力を変えていくにはしっかりとしたビジョンやミッション、それを結びつけていくことが大切だと井上氏は語ります。
2,000組を超えたのをきっかけに、「TEAM FOR WEDDING」というキャッチフレーズのもと、チーム一丸となって新たなスタートを切ったのでした。

ー 人を増やせばよいというわけではない

「労働集約型ビジネスが成功しないケースはこの中心にあります(下図)。ひとつの会社や組織では、どうしても考え方や役割が違います。各セクションごとで論理が違います。そこにしっかりとした土台を作るミッション、さらに個人の存在意義や目的を明確にすることが大切です。あとはリーダーシップや組織構造によってそれぞれが機能していきます。

どうしてもうまくいかない時、プロセスや組織編成を疑いがちですが、そもそもあいだの人間関係が悪いと労働集約型は成り立ちません。われわれは調理場、サービス業、営業がワンストップ型で収まっているため、ミッションをしっかり作らないと、立派な戦略があってもミッションに対しての団結力は上がりません。われわれはミッションを明確にし、チーム力を高めることでV字回復を見事達成させました」

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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