EDITOR’S REPORT

八芳園の生涯顧客化への取り組みとは(その2)

ー 50年越しの結婚式、八芳園の生涯顧客化への取り組み

FOODITは「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨ではじまったカンファレンスです。開催3回目となる「FOODIT TOKYO 2017」では約1,000人が来場し、外食産業のブラック化・人手不足など”生産性”をテーマに、著名人による多くのセッションが行われました。
第4回目となる今年は2018年9月13日(木)東京ミッドタウンホールにて開催いたします。
詳細はFOODIT TOKYO 2018ページをご覧ください。

スピーカー:井上義則
日時:2017年9月21日、FOODIT TOKYO 2017、D会場、15:00〜15:45


 

「私はよく社員に「会社ってなんのためにあるの?」といつも問うています。

数字が悪いということで会議をはじめると、それは数字の報告会になってしまう。どちらかというとクリエイティブな会議に変えたくて「世の中に価値があるものを提供しているか」ということを聞くようにしています。

八芳園にはこんなビジョンがあります。庭園ができた時、先代はこう思ったそうです。「日本のお客さまには、こころのふるさとを」「海外のお客さまには日本の文化を」

僕が来た時は具体的なビジョンが設定されておらず、先代の思いを引き継ぎ「いつまでも、在り続けること」「OMOTENASHIを世界へ」というミッションを9年前に掲げました。2020年に東京オリンピックがありますが、まさかオリンピックでこういう言葉が出てくるとは思っていませんでした。

あらためて、僕らは何をやっているかという”ミッション”はものすごく大事で、今では「いつまでも在り続けます、八芳園は」というフレーズに共感した顧客が集まってきています」

ー 「いつまでも、在り続けること」、生涯顧客化への取り組み

「結婚式を八芳園で挙げていただいたお客さま方に「今後の八芳園へ向けて一言お願いします」とアンケートを取っているのですが、その中でこんなお答えがあるんです。「本籍を八芳園の住所にしました。私たち二人がいつまでもスタート地点として振り返ることができるような素敵な場所でいてください」とあり、実はそういったご意見が非常に多いんです。

あらためて、”在り続けること”に価値があるんだなと、そこから「生涯顧客化」の考えへとスライドしていきました。

結婚式をやる時点で赤ちゃんを身ごもっている新婦は50%もいます。そこで「赤ちゃんのデータを取ろう」ということに乗り出していったんです。

まず、結婚式後も利用できるイベントをたくさん企画しました。結婚後もライフスタイルに合わせてイベントやレストランなどでリピートしてもらおうと。

結婚式を何度もやっていただくのは、本音としては良いのかもしれないですが(笑)、本質から言うと結婚式は一回でいいのです。ただし結婚後のライフデザインに合わせながら、継続的に利用していただくということをしていかなければ、当然ながら結婚マーケットは縮小していきます。だいたい年間60万組ほどが婚姻届を出されていますが、披露宴の実施率はその60%、つまり40何万件が全国でひしめき合っているのです。

最近では結婚しない方が増えていますが、その他にも入籍だけという課題もある。そこに対して式場というのはどういった存在かという認識を変えていかなければ、なかなか結婚式場の需要は広がっていかないでしょう

八芳園はデータベースにセールスフォースを使い、アマゾンのAWSを使ってアプリを開発しました。無料で家族の写真を共有できるほか、ムービーも作成でき、クラウド管理を可能に。動画を蓄積することで1年2年3年と動画が長くなっていき、50年続けると1時間ほどにもなります。それをアウトプットするために上映会・宴会で式場に来てもらうというサービスも行っています。
お葬式にもこの動画を持っていって上映したことがあり、まさに思い出のアルバムが提供できました。また式場でのイベントの告知、イベントへのチェックイン機能なども搭載し、より式場を利用してもらうための広告塔の役割も担っています」

立ち上げてから1年半、現在1万組のデータがあり、2万人の子供のデータが集約されており、子供の成長に合わせたイベントなどを異業種とコラボしながら提供していきたいと井上氏は語ります。

ー 余命あとわずか、50年越しの結婚式にかけた思いとは

「写真は、2年前にいらっしゃった山下夫妻です。50年前に八芳園で挙式されたご夫婦で、訪ねた訳を聞くと、実は旦那さんの余命があと数ヶ月。夫婦でスタートした地点に戻ってきたというのです。
そこで、これから結婚54年目、55年目と続いていくような結婚式をしましょうと提案しました。旦那さんには自分の持っているタキシードを着ようという”生きる目標”ができました。挙式当日、奥さんはウエディングドレスを着ました、74歳で。「ああ人って細胞は老いていくけど、気持ちが高揚すれば眼差しってすごくキラキラ輝くんだな」と思いました。

ぜひこの夫婦にアプリを使ってもらいたいと思っていた矢先、アプリ誕生の直前、昨年3月に旦那さんは亡くなられました。結婚式で撮影した動画をお通夜で流すと「このような思い出を残す取り組みは今後も続けていけよ」と、この山下さんに背中を押してもらった気がしました」

ー ファンづくりへの取り組み

八芳園では生涯顧客化の施策として、年に一度ファン感謝デーを開催しています。子供が2000人、親が1000人ほど来るイベントで、無料で招待してファン構造をつくることで、広告費は年間減少傾向にあるとのこと。さらにSNSなどで共有されていて、コンテンツ化が進んでいるといいます。

他にはオーガニックレストランも展開しています。離乳食のレクチャーなどイベントも行い、そこでの参加者同士で新たなコミュニティーも生まれているそうです。

「顧客の問題を商品で解決する時代は終わり、サービスをうまく活用することで、それがコンテンツとなってメディアに発信されていく、という時代に変わったと感じます。

100年を生きる時代に、楽しむサービスを提供する会社になろう。それがわれわれ八芳園なんだというメッセージを発信していくための準備を今している段階です。これからも、結婚式場というビジネスから領域超えをしていく取り組みを考えていきたいです」

 

FOODIT TOKYO 2018の詳細はこちら

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

チケットはこちらから

FOODIT TOKYO 2018
@ Tokyo Midtown Hall

開催日時:2018年9月13日(木) 11:50 - 19:00
場所:東京ミッドタウンホール

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